医療の現場からレポート⑩

心の運動療法家、岡本浩之です。

精神科クリニックで診療をしていて感じたこと、思っていることを「医療の現場からレポート」と(大げさに)題してお伝えしていきます。

新型コロナ禍で自律神経失調症に?

新型コロナウイルス感染症感染拡大により発出されていた緊急事態宣言が5月末に解除されましたが、都内などで感染者数が増え、「東京アラート」という言葉がニュースになっていますね。

まだまだ新型コロナウイルス感染には注意をして生活をする必要がありそうです。

そんな中で、「うつ、自律神経失調症の方が増えている。」というニュースを目にしました。

「うつ」については、「気分が落ち込んで憂うつで、何もやる気が出なくて眠れないし食欲もなくて・・・・。」と何となくイメージできる方が多いのですが、「自律神経失調症って何?」というと分かったような分かっていないような、そんな方が多いように思います。

そもそも自律神経って何?

自律神経って一つの独立した神経のように思っていませんか?

自律神経は、「活動する時に活発になる交感神経」と「安静時に活発になる副交感神経」で構成されています。つまり、単一の神経ではないのです。

呼吸、血液の循環、体温調節、消化、排せつ、免疫など全身の機能を調節するために24時間働いています。

交感神経と副交感神経がバランスよく働くことで我々の体は保たれるのですが、自律神経失調症ではこのバランスが崩れています。

自律神経失調症の症状は?

ふらつき、動悸、発汗、息苦しさ、のぼせ、冷え、頭痛、耳鳴り、便秘、下痢、生理不順、吐き気、胃痛、頻尿・・・・・

症状を挙げるときりがなくなってしまいますが、全身の器官をコントロールしているので人によって様々な症状が現れます。

ついでに言うと、「自律神経失調症」は一つの疾患名というよりは、「交感神経と副交感神経のバランスが崩れた状態となって起きる症状」の集まりのことです。

不規則な生活、新型コロナ禍のような大きなストレスがきっかけで一過性に起こる場合と、うつ病やパニック障害などの症状の一つとして起きる場合などがあります。

私たちが出来る対策は?

うつ病やパニック障害の症状として起きる場合は、その治療をすると自然に治まることも多いです。薬を飲んだり、カウンセリングを受けたり、動けそうなら少しずつ運動もしたり。

新型コロナ禍のような大きなストレスが原因の場合、中々避けるのが難しいですよね。前もって準備のしようがないですし、ストレスから逃れることも不可能ですから。

予防するためには極力規則正しい生活をして、しっかり運動をしましょう!

結局運動って言いたいだけだろうって?

バレましたか・・・

室内で出来る運動をぜひ一緒にやりましょう!

心の病気の伝え方

心の病気は一般的には「脳の神経伝達物質の不具合」「脳内のBDNFの減少」などと説明されます。

親が心の病気だと子供も必ずなるのではないか、親の育て方が悪いから心の病気になった、ストレスがあるから心の病気になるんだろう、などと言われますが、実際のところは分かっていないことも多いです。

同じ遺伝情報を持つ一卵性双生児でも片方だけが心の病気になることもありますから、遺伝だけで決まるものではなさそうです。

同じ環境で同じように育っても、心の病気になる人とならない人がいるので、環境だけで決まるものでもなさそうです。

過度のストレスは原因になりますが、ストレスのない生活を送ることはあり得ません。

分からない中で私が漠然とイメージしているのは、心の病気になりやすい素因を持っていて、それに環境的な要因が重なって、耐えられるレベルを超えると症状が出てくるというものです。誰もが心の病気になり得ると思っています。

誰もがなり得るとしても、心の不調を他人にどうやって言葉として伝えるのか難しいなと悩むことはないですか?

体の不調だと、「熱が出ている。」「お腹が痛い。」「胃が気持ち悪い。」などと言葉で説明しやすいのですが、心の不調は伝え方が難しいと思われるかもしれません。

せっかく受診をしたのに、「こんなんでうちに来られてもねえ。」と鼻で笑われたとか、「こんなの病気じゃないんだから来るな。」と説教されたとかいう話しも聞きます。

個人的には、医師がいきなりその言い方をするのはおかしいと感じます。

心の悩みがある場合、体の症状で困って内科に行ったけど「内科じゃなくて心の問題だよ」と言われた場合には、どんな症状であっても受診してみて良いと思います。

それをいきなり笑ったり怒ったりする病院は、「そんな程度の低いところ、こっちから行ってやらないぞ!」くらいの上から目線でもいいと思っています。

医師ならばまずは困っている内容を聞いて受け止めて、それが治療の必要がないものであれば、心配しないで大丈夫ですよと柔らかく伝えるべきではないでしょうか。

最初から受診の基準が分かる人なんていないですよね。それを怒ったり笑ったりするようなところはこちらから見限りましょう。

でも、そうはいっても、せっかく緊張して行ったのに、怒られたり鼻で笑われたりして平気でいられる人はまずいないです。

私が中学1年生の時に、心の不調から吐き気が強くなって走れなくなり、倒れたことがあります。その時に、病院で何をどう説明したら良いのか、途方に暮れました。黙って何も言えない私の代わりに親が説明してくれたのですが、「走ることがプレッシャーになって気持ち悪くなってしまう。」というような説明でした。それに対して医師は、「それは病気じゃないよ。スポーツやるんだったらそれくらい乗り越えないと。」と怒るのみで、私のつらい思いは伝わりませんでした。

うまく伝わらない・・・・・

そんな経験があるので、どうやったら伝わるのかというのは悩む方の気持ちは理解できているつもりです。

私が皆さんにお教えしたいのは、「生活、仕事にどのような影響が出て困っているかを医師に伝えてみましょう。」です。

例えば、「夜寝ようとしても眠れなくて、仕事に行ってもずっと頭の中がぼんやりして、一応仕事はしているけどうまくできている気がしない。」

「胸が苦しくて。じっとしていられないくらいの感覚になって動き回らずにはいられなくて。すべてのことに集中できない。」

「朝だるくて、起きないといけないのに起き上がることが出来なくて、だらしがないと親に怒られて言い合いになる。」など。

もちろんこれだけで診断はつきません。しかし、このように「生活や仕事に影響が出て困っている」ことを話して頂くと、我々精神科医は患者さんが実際に困っている様子を思い浮かべながら、さらにお話しを引き出していくことが出来ます。診断や治療の進め方を考えていくことが出来ます。

何をどう話したら良いのか分からない場合には、「生活や仕事に影響が出て困っていること」から順番に話すようにしてみてください。

この「生活や仕事に影響が出て困っている」という基準はとても大切です。これは実際にあった話しですが、ある方がこのようにおっしゃっていました。

「仕事に行くのが苦痛で朝起きられなかったらうつ病だ。って記事を見たけど。それって誰でもあるよね?俺も朝起きるの面倒だな。仕事に行きたくないな、って布団の中でしばらく葛藤するよ。じゃあ、俺もうつ病だな。」

これでは、うつ病は怠け者だと誤解されてしまいますね。うつ病の場合は、気分が落ち込む、やる気が出ない、眠れないなどの症状があって、仕事や生活に大きな支障が出てしまいます。このように、影響が出て困っているかどうかは、病院に行くべきかどうかを決める基準になります。

「ネットでうつ病の簡単なチェックがあって、試しにやってみたらうつ病で受診が必要と出たけど、別に自覚ないんだけど。」という話しも度々耳にします。

「うつ病チェックをやってみてうつ病と出たから、別に困っていないけど受診する」のではなく、「症状が出てつらくて困っていて、かつうつ病チェックをやってみたらうつ病と出たから受診する」と考えてください。

「最近眠れない日があるけど、いつもじゃないし昼間眠くもないし元気だしな。」だと受診を急ぐ必要はないけど、「眠れなくて昼間もぼうっとしてやる気が出なくて、何もできず寝ていることが増えたな。」だと受診を積極的に考える。

この違いが理解できたら、受診の基準についてはご自身の判断を信じて大丈夫ですよ。

回復してようやく始められた振り返り

2014年以降は精神的に随分安定しましたが、自分のこれまでを振り返ることが出来るようになったのは2016年頃からでした。

それまでは、自分の苦しい体験を思い出そうとするととてもツラく感じたり、「また悪くなったらどうしよう。」と不安が強くなるので思い出せませんでした。

私のうつ病の治療に関わった方には少し話しをしましたが、詳しく話すことはなく、大半の方には私がうつ病だということは気付かれていませんでした。

2017年頃からは私の病状を詳しく振り返ることが出来るようになりました。発症したのが中学1年生の時ですから1991年です。26年の時間がかかって、ようやく受け入れたのです。

4回うつ病を繰り返している中で死にたい気持ちが強まり、一歩間違えたら死んでいる、そんな状態に何度もなりました。家族がいるのに死んだら残された家族がショックを受ける、命を大事にしないといけない、そんなことは分かっていても、それよりはるかに大きな力によって死に引き寄せられました。

もし5回目のうつ病が起きたら、今度こそは死にたい気持ちに逆らえず自殺を成功させてしまうかもしれない、そう感じました。

再発させないためには、うつ病になりやすい要因を少しでも減らして行く必要があります。

ここまで私が自分の生い立ちや病歴を長々と振り返ってきたのは、決して「私はこんなに大変な経験をしました。かわいそうな人です。」と言いたいからではありません。

私が自分の経験を振り返り、また精神科医としての診療経験から得てきたことを多くの方に伝えたい、その長い前置きとして、振り返りました。

私は子供の頃から自分に自信がなく、ことあるごとに自分のことを否定しました。高校時代に模擬試験で全国1位を取った時ですら、自分を高く評価することが出来ませんでした。おそらく、仮に何かで世界1位になったとしても、当時の私は「まぐれだ。すぐに転げ落ちて、周りから馬鹿にされる。」などと考えて自信に出来なかったと思います。それくらい、何をやってもダメなヤツだと自分を卑下していました。

今でもその考えが根本から変わることはありません。何かあると「やっぱり自分は何をやってもダメだな。」とすぐ考えて自分を責めます。長年染みついた考え方は簡単に変わるものではないですから。

しかし、この考えが絶対的に悪いものだと否定する気持ちはありません。ダメだと思うからこそ、もっと頑張らなきゃと思う力にもなってきました。受験勉強の世界だけではありますが、全国1位になったこと、東京大学理科3類に現役合格したことは、自分をダメなヤツと否定する自信のなさが生んだものと考えています。

また、視野が狭くなり何かに過集中といえるほどのめりこむのも私の特徴の一つです。子供の頃は陸上競技で生きることだけを考えてそれを生きる支えにして、中学受験、大学受験でも勉強だけに集中して自分の思う結果を出しました。医師になってからも過集中となって人並み以上に頑張れました。これも生まれつき持っているもので、治せるものではないと思います。

自分に自信がなく自分を否定すること、視野が狭く過集中になることが私の頑張りの源である一方で、うつ病になった原因の一つと言えます。ですから、「治せないものは仕方ない!」と開き直るのではなく何か変える必要はあります。といっても、自信を持てとか集中しすぎるなとかいきなり言われても変えられるものではありません。気の持ちようだけで変われるくらいの簡単なものならば、そもそもうつにはならないでしょう。

これは多くの方が既に試みていることかもしれませんが、私が日々意識したことは、「今のダメな自分でも出来ていること、頑張ったら出来そうなことは何か。」と自分に問いかけて具体的に見つけ出すことでした。

最初は「頑張っていることなんて何もないよ!」「こんなの出来たって、出来たうちに入らないよ!」とくじけそうになっていました。

そこで私が完全にくじけなかったのは、既に紹介しましたが、以前にかけられた友人の言葉があったからです。

「5分しか走れなかった。」とうつ病を経験して走れなくなったダメな自分の状態を友人に伝えたところ、その友人は「5分も走れたの?前は外に出てすぐ引き替えしていたじゃん。段々走れているね。」と言ってくれました。

半年前はもっと走れていたのに、こんなにも走れなくなるのか、と落胆している私の心にはずっと残りました。その時の友人と同じように、「何も出来ない私しか知らないもう一人の『私』だったらどんな言葉をかけてくれるかな?」そう想像して、どんな些細なことでも良いから、今の時点で出来ていることを探して書き出し、もうちょっと頑張れば出来そうなことも書き出しました。

極力目線を低くして出来ていることを見つけ出し、頑張れば出来そうな低いハードルを設定しました。低いハードルを設定して、それをクリア出来たら「出来て当たり前」ではなくて「ちゃんと超えられた」ことを意識するようにしました。

もちろん、周囲の出来ている人のことは嫌でも目に入ります。「それだけしか出来ないの?」という声も耳に入ります。そんな時には比べて落ち込んでしまいます。これまでは落ち込んだらずっと落ち込みっぱなしでした。

しかし、最近では落ち込んだままではなく、「それでも、私には出来ていることがある。まだこれから出来ることもある。」で終われるようになってきました。

また、過集中になって簡単に限界を超えてしまうことに対しては、「頑張り過ぎないようにしよう」と加減するのは難しいと感じたので、「過集中となって頑張ってしまうのは仕方ない。その代わり、無理矢理休養をして回復させる期間を作ろう。」と意識するようにしました。

休養することにはものすごい罪悪感があります。「サボってしまった。もっと頑張れたはずなのに。」とマイナスに捉えがちです。しかし、休養をおろそかにして無理を重ねた結果力尽きてしまったりうつ病になるのですから、「休養はその後にまた頑張るために必要なもの。」と強く意識するようにしました。休養をした後にどう頑張るかを具体的にイメージして、少しでも休養中の罪悪感を減らそうとしています。

コロナうつを防ぐために②

「うつを予防するために、自宅で出来る運動をしましょう!」というテーマで動画を公開しておりますが、今回は第2回目。

コロナうつを防ぐ 第2弾

実際の運動動画も1つだけ紹介しました。
しっかり運動をやっている方からすると、「こんなので良いの?」と思われるでしょうけど、まずは負荷の軽いものから。
トレーニングに詳しい方は「これってタバタ式じゃん?」と思われるでしょうけど、その通りです!
トレーニングをやっている方からすると当たり前のように何気なくやっていることが、うつの予防や改善に良い、ということをお伝えしていきたいと思います。
特別な難しい運動をする必要はないです。

難しい運動になると、元々運動が苦手な私には出来ないので…

動画を見ながら、一緒に動いてみてくださいね!!

次回は心拍数計測についての話し、より負荷の高い運動の紹介もしていきます。

前回の動画はこちらをご覧ください。

コロナうつを防ぐ 第1弾