産後うつは甘えなのか?

心の運動療法家、岡本浩之です。

産後うつは甘え?

Twitterで目にしたのですが…ある方のツイートが話題になっていました。

もし奥様が「産後うつ」を言い訳にして家事や育児を怠ったら怒鳴りつけて躾けましょう。私は産後3ヶ月で衆議院議員選挙を全力で駆け抜けました。

「産後うつ」は「甘え」です。

「産後うつ」なる病気は地球上に存在しません。誰かが勝手にあると思い込んでいるだけ。(icdにもdsmにもない。産褥期うつ状態F530はあるが、状態であってうつではない)

これからなる世界は、甘ったれた精神ではならんのです。

という内容です。(ご本人のツイートをそのまま引用しました)

「産後うつ」という診断名はない?

確かに「産後うつ」という疾患名そのままではICDやDSMの診断基準には載っていないですが、だから甘えだ!というのは随分と飛躍し過ぎていますね。

一般的に「産後うつ」と言われる状態を、ICDやDSMに記載された診断名で表記することは可能です。
※ 「産後うつ」と一括りにされますが、うつ症状の内容や程度によって名称は変わってきます。

妊娠、出産という大きなストレスがかかるのですから、当然精神的にも不安定になりやすいです。
甘え(サボっている、だらしないというマイナスな意味を含めて使っている言葉と解釈しました)で片付けることは出来ません。

産後すぐの選挙活動は確かに大変だけど

たとえ周囲の協力があったとしても(協力がなければ尚更のこと)、産後3か月で衆議院議員選挙を全力で駆け抜けるのは相当な労力だったかと思います。

選挙の結果がどうであれ、その頑張りはとても素晴らしいことです。「落選したやん!」とからかって揶揄すべきではないと思います。

ただ、ご自身が出来て他の人が出来ないことを「甘えだ」、と切り捨てることはいかがなものかとも思います。

甘えることが苦手な人たち

日頃の診療で、うつ状態になる人達は適切に甘えることが苦手で、甘えることが出来ず耐えてため込んだ結果潰れてしまうパターンが多いとも感じます。
安易にうつ状態に逃げているのではないです。

※そうではない方もいらっしゃることは申し添えておきますが。

うつ症状に苦しむ方々が益々声を上げづらくなるのではと感じたので、記事にしました。

ツイート主の過去のツイートを見ていると、「精神疾患であることを理由に責任逃れがまかり通っている」という憤りがあるのかなと感じました。

確かに事件の犯人が精神疾患であることを理由に減刑される、というのは納得いかない人が多いでしょう。

しかし、精神疾患を有している=何をやっても許される ではないです。

私も精神鑑定に従事していたことがありますが、精神疾患を有する加害者の責任能力の有無については、(当たり前ですが)かなり慎重に検討を重ねて判断を下しています。何でもかんでも「精神疾患だから許してあげてよ」なんて甘いものではないです。

もちろん、被害者やその遺族の方からすれば納得できないとは思います。私の近い方が被害を受け、加害者が精神疾患を有していた場合、私自身が冷静にこんな話が出来るとは思えません。ただ、安易な判断をしているのではないとだけは説明させてください。

過去の大きな事件の鑑定書は書籍の形で我々が目にすることも可能ですので、興味のある方はご覧ください。

走って治す

運動に対しての考え方と前回書きましたが、具体的に見ていきたいと思います。

私は一流のマラソン選手になることを夢見て、兄を超える選手になる以外に自分の生きる道はないと考えていた当時、私は完璧な練習をして完璧な体調で完璧な結果を出さないといけないと自分を強く縛っていました。

初めての大会で緊張から吐きそうになった時、練習で思い通りに走れなかった時、私より遅かった選手が私をドンドンと追い越していく時、「やっぱり自分は何をやってもダメだ。」と自分を責めていました。「ダメな奴なんだから人の何倍も努力を重ねないと。休んでいると周りにもっと遅れを取る。」と自分が休むことに強い罪悪感を覚えていました。

しかし、そうではないのです。結果としてはダメだとしても、本当に何も頑張らなかったのか。どこかに評価出来る部分はあるのではないか。その視点で探すと、どんな結果でも私なりに頑張ったことがありました。周りの誰が評価しなくても、私なりの頑張りがあったことを、せめて私だけでも評価しようと思いました。

「大会で、走り出したらあまりにも体が動かず、思うようなタイムでは走れそうもなくて途中で勝負を諦めてしまった。でもせめてゴールまでは行こうと思って、その通りにゴールにたどり着いた。」そう自分に言い聞かせると、落ち込みっ放しで終わることはなくなりました。

ですから、うつの予防や治療に運動を取り入れる時には自分のやった運動について日々振り返り、出来ている点、良かった点を必ず探し出して下さい。悪かった点を見てはいけないということではありません。悪い部分ばかり最初は目につくかもしれません。悪い部分を見ることで次は改善出来るように頑張ろう、という力にもなるので、悪い部分を見ることは大切です。しかし、悪い部分ばかり見続けていると、運動することが大きなストレスとしてのしかかります。どんなに小さなことでも良いです。悪いなりに出来たことは必ず見つかります。

私は、「今日は面倒だからサボっちゃうかなと思ったけど、気を取り直して5分だけ走った。」という些細なことでも、出来たこととしてとらえるようにしています。ランニングの時には常時心拍数を測れる時計をつけているのですが、「平均心拍数を140以上に上げることが出来た。」といったことも出来たこととしてとらえています。

些細なことでも良いから出来たことを探そうと思っていると、段々と探しやすくなります。それでも頑固な私は、頭の中だけで考えてもそれを「出来たこと」と意識することが難しかったので、文字にして書いて読むことにしました。

そして、休養についてもただ何となく休むのではなく、休んだことの罪悪感を減らすために休む理由を考えました。

「体が重い。今日無理に走ると風邪を引きそうだから休む必要がある。」「明日しっかり走るために、今日は休む必要がある。」そう自分に言い聞かせて休んでいます。

そう考え続けていると、あれだけ悩まされていた吐き気から解放されてランニングを出来るようになりました。記録を狙って緊張して大会に出ても、厳しい練習をして追い込んでも、精神的に落ち込んだりすることはなくなりました。

仕事で精神的に疲れた時に着替えて走りに行くと、ストレスが軽減して眠りやすくなる。そういう効果を実感出来るようにもなりました。走りすぎて逆に眠れなくなることもあるのですが、「走りすぎて交感神経が活発に働いているから仕方ない。明日は眠れるだろう。」と考えて、眠れないことを気に病まなくなりました。

ランニングをする中で、「他人や過去の良い時の私との比較だけで現状を評価するのではなく、今の私が出来ていることを素直に評価して、少し頑張れば出来そうなことを目の前の目標にして確実に達成する。」ことを意識しやすくなりました。そうはいっても、長年染みついた考えが大きく変わることはないので、すぐに比較して落ち込んではいます。しかし、落ち込むだけで終わることはなくなりました。

「今の自分に出来ていることを見つけ出す」「次に頑張るために休養を取る」ことを意識し続けた結果、「走って治す」ことがようやくしっくり来るようになりました。

7つのタイプの「うつ」にも運動を

「うつ」の分類の中で、対処方針として運動が全部入っていることに気付かれたかと思います。ちょっと強引だったでしょうか(笑)

運動習慣がある方が認知症を発症しにくい、中強度~高強度の有酸素運動が精神疾患の予防や改善に有効という論文は沢山出ています。

私自身、うつ病から回復する途中で、薬の服用だけではどうも回復が頭打ちになっていましたが、ランニングによってより調子は良くなってさらに崩れにくくなりました。

連載の最初の方で、精神疾患の原因として「脳の神経伝達物質の不具合」「脳内のBDNFの減少」という仮説があるという話しをしました。

「うつ」でもやはり同様の状態が脳内では起きていると考えています。

運動することによって脳内のBDNFが多く作られたり、神経伝達物質の働きを調整することを考えると、うまく運動を活用することで「うつ」の予防や回復に役立てていけると思います。

私は一番身近な運動がランニングだったので、走って治すということにたどり着きました。

しかし、「うつ」予防や改善のための運動の中身は何でも良いと思っています。

心拍数をある程度上げるように意識すると良い、と言われていますが家で出来る簡単な筋トレの方が取り組みやすければ、それが一番良いと思います。

特に運動不足の時や「うつ」で気分が落ちている時に頑張って運動をやり過ぎると、余計なストレスになって調子を崩すばかりです。

既に話した通り、運動することによって脳内のBDNFが多く作られたり、神経伝達物質の働きを調整することが出来ます。その一方で、運動はストレスとなって脳の神経細胞を傷つけることもあります。ストレスになりすぎないような取り組み方が大事になります。

そのために大事なのは、運動に対しての考え方だと実感しています。

まじめストイック型の人間は運動を始めるとついつい過度に頑張り過ぎて追い込みます。ストレスが積み重なるので、サドンダウン型やステップダウン型の「うつ」にも陥りやすく、運動がうつの悪化を進めてしまいます。

私がランニングを再開したのはうつを改善したいという思いからですが、最初は不安が大きかったです。ランニングを再開して走れるようになると、大会に出なきゃいけないと思い、大会を意識すると、走ることでまた自分にプレッシャーをかけすぎて、うつ病が悪化するのではないかという不安が非常に大きかったのです。

精神疾患の治療に運動が良いとは言うものの、私自身が発症したきっかけは陸上競技を本格的に始めた後であり、また3回目、4回目もランニングをしっかりしている最中でした。

ランニングは好きですが運動全般は苦手で、学校の体育は苦痛で休みたいとばかり思っていました。

そういったこともあって、ランニングがうつ病の予防や治療に役立つという実感は持てず、大会に参加することを意識しただけで過去を思い出してしまい吐き気が出るは眠れなくなるはで、調子が悪化する引き金になるとさえ思っていました。

大会に出るとか考えずに軽い運動だけで満足すれば良いのでしょうが、私のことですから走り出して体力が付いてくるとまた記録を狙いたくなるのは明らかです。記録を狙うには無理をすることも必要になります。

その一方で記録を狙って走ることが全て悪いのであれば、そういったランナーが精神疾患を発症する割合は多くなっても良さそうですが、私の知る限りそのような様子は見受けられません。

私はどのようにランニングをしたら良いのかを考えた結果、一定の答えが出ました。私のような、うつになりやすい人間がうつの予防や治療に運動を活かすためには、運動に対しての考え方や休養の取り方を強く意識することが重要だと実感しました。

ストイックにとにかく追い込むことに慣れている私にとっては、考え方や休養について意識することは中々難しかったのですが、時間をかけて徐々に出来るようになってきました。

「うつ」のタイプ分けと対処法

前回お示しした、7つのタイプ分けとその対処方法について簡単にですが記載してみました。

①ヘビーストレス(ステップダウン)型

誰もがなり得る最も多いケースです。ストレスが徐々に積み重なって、誰が見ても耐えられそうもない重さとなって押しつぶされるケースです。

②まじめストイック型

やり出すと時間を忘れて集中し、完璧を目指すがゆえに、ふと躓いた時や大きなヤマを越えた時に燃え尽きてしまうケースです。

[対処方針]

①②の防止策は、ついついやり過ぎていないか、細やかにウォッチして声かけする役割を、上司だけでなく同僚も担うことです。もちろん自分でもやりすぎていないか注意をすることが必要ですが、なかなか自分でブレーキをかけることは難しいです。

1時間作業をしたら5分の休憩を必ず入れる、休日は30分運動の時間を作る、などストレス対策を具体的に組み込む必要があります。

③サドンダウン型

「え?あの人がうつに?」と言われるのがこのケースです。

もともとメンタルが強いと本人も周囲も自覚していて、周囲からは信頼され、その信頼に応えるよう本人は仕事を引き受けて、周りも頼みやすいので頼みすぎて、ある時急に潰れてしまう、そんなタイプです。①と似ていますが、徐々にうつになる①と比べて、予兆が見えず本人も周囲も気付きにくいので注意が必要です。

④ロンリー・トンガリー型

自我が強く、いつでも誰に対しても我が道を貫く、軋轢を恐れない強気姿勢で常にいたのに、その自我、自信がふとしたことで揺らいだ時に、一気にうつに突入してしまうケースです。

周りとのあつれきが大きく孤立してしまい、居心地の悪さや自分を分かってもらえないつらさから調子を崩します。

[対処方針]

③と④の防止策は、周囲が本人の価値観や行動パターンを認めつつ、うまく主張を他人に譲るようにさせたり、相手に合わせることができるようにその人のコミュニケーションをより柔軟なものに変えていくことが有効です。思考の柔軟さを出すには、ただ考え方を変えようと頑張るのではなく運動も取り入れるのが有効です。運動をして脳の神経のバランスを整えると、より柔軟に考えやすくなります。

⑤耐えて笑って型

相手を立てるがゆえに、全体の調和を守るために、いつも顔で笑って心で泣いて、自分を押し殺して、その先に受容限度を超えてある日ポキリと折れてしまうケースです。

[対処方針]

明るく社交的に振る舞っていてうつとは無縁なタイプのように見えますが、心の中ではストレスを溜め込んでいて、ふとした時に突然怒りっぽくなったり、愚痴を言い続けたりと豹変します。溜まったストレスをはき出す相手を持つ、相手がいない場合は運動して気持ちをリセットする時間を必ず作る、という「ストレスをはき出す場所」はしっかり確保しておきましょう。

⑥ドキドキ顔色うかがい型

不安が強くいつも緊張し、ちょっとしたことで落ち込みやすい性格で、相手の心理を必要以上に過敏に感じ取って、妄想レベルの想像をして不安に押しつぶされてしまうケースです。

[対処方針]

⑤は気配りが過ぎて知らないうちに我慢を重ねてしまっていて、⑥は小さなことが不安につながってしまっているので、リラックスできる時間を作るように、自分の存在に自信を持てるように、周囲の声かけや配慮が必要となります。自分で自信を持たせるためには一人で出来る運動を自分なりの目標を立てて継続してみると良いですね。

⑦ライトうつ型

嫌なこと、責任がかかることには過敏に反応して落ち込んで潰れやすい一方で、ストレスの少ない環境ではのびのびと元気に動ける、そんなタイプのうつです。「新型うつ」「現代型うつ」という名前で問題になったのがこのタイプですね。

一見、本当に調子が悪いのかどうか、周囲から判断するのが難しい場合もありえます。

「仕事では調子悪そうなのに遊ぶ時には元気だな。」、「休職中なのに旅行には行けるんだな。」と周囲から非難を受けやすいですね。

[対処方針]

他の6つの型と比べると、より重いうつになる前に本人が対処している、ブレーキをかけるタイミングを無意識に知っているとも言えます。その判断を理解しつつ、会社なりコミュニティなりで果たす役割を、様子を見ながら少しずつ増やして自信を与えていくことが大切です。重くなることを予防するためには運動を取り入れると良いですね。

1つのタイプだけに当てはまる方もいれば、複数のタイプを併せ持っている方もいるかと思います。私自身は、睡眠時間が平均3時間くらいで診療などをして、休診日にも非常勤で働きに出てあまり休まっていないので、①ヘビーストレス(ステップダウン)型に当てはまりますね。さらに、やり出すと時間を忘れて熱中するので②まじめストイック型にも当てはまります。また、ニコニコしてあまり自分のツラさを見せず、うつ病の症状が重い時でも「のんきそうだね。」と言われていたくらいですから、⑤耐えて笑って型にも当てはまります。人の顔色を気になって過剰に考えてしまうので⑥ドキドキ顔色うかがい型でもあります。

当てはまるものが多いほどうつに陥りやすいので、再発しないように気を付ける必要がありますね。

どれに当てはまるか、これを読んでいる皆さんもご自身の言動を振り返ってみて下さい。

「うつ」をもっと相談しやすく

前にも触れた通り、精神疾患に対しての偏見をなくし、発症しても気軽に相談出来、予防や治療について当たり前のように話題に出来る世の中を作っていけたらいいなと強く考えて、「明るい精神科」を目指しています。

私が考えるまでもなく、精神科に相談しやすくなるような世の中にしようという取り組みは行われてきました。

だいぶ前にはなりますが、「うつは心の風邪」という言葉でうつ病の啓蒙が行われたことがあります。実際のうつ病は風邪よりもはるかに治療が難しいものだ、という反発が大きく、今ではあまり聞かれなくなりました。風邪というよりも治療がなかなかうまく行かない重度の肺炎という感じでもあります。ただ、いきなり肺炎になることはなく風邪の症状が出て徐々に悪化するように、うつについてもいきなり重くなることは少なく、その手前で何かしらのサインが出ていることが多いです。

私の場合は、ほぼ毎回吐き気と食欲低下、倦怠感がまずありました。おかしいと思いつつ我慢していて、大きく調子を崩してしまいました。

うつ症状が重くなって仕事が出来なくなって、やっと本人も周りも気付いて、「どうしよう。」と慌てることが多いです。そこまで重くなってから対処をしようとしても、うまく行かないことの方が多くなります。

そうなるずっと前に、「心が風邪を引きそう。」という段階で気付き、相談出来ることで「うつ」の悪化を防ぐことが出来ます。

「うつ」を怖いもの、隠すべきものと考えて遠ざけるのではなく、誰もがなり得る身近なものと認識することで、「うつ」のサインを自覚しやすかったり周囲に気付かれやすかったり、相談しやすくなります。

そのためにはまず、「うつ」をより分かりやすく、かつ重さを感じないようにとらえ直すことが必要だと思い、7つのタイプに分類してみました。

「何だ、このネーミングは!精神疾患をバカにしているのか?」と怒る方もおられると思います。批判は覚悟しつつも、少しでも日常会話の中で口にしやすい言葉を考えてみました。

【7つのタイプ】

①ヘビーストレス(ステップダウン)型

誰もがなり得る最も多いケースです。ストレスが徐々に積み重なって、誰が見ても耐えられそうもない重さとなって押しつぶされるケースです。

②まじめストイック型

やり出すと時間を忘れて集中し、完璧を目指すがゆえに、ふと躓いた時や大きなヤマを越えた時に燃え尽きてしまうケースです。

③サドン・ダウン型

「え?あの人がうつに?」と言われるのがこのケースです。

もともとメンタルが強いと本人も周囲も自覚していて、周囲からは信頼され、その信頼に応えるよう本人は仕事を引き受けて、周りも頼みやすいので頼みすぎて、ある時急に潰れてしまう、そんなタイプです。①と似ていますが、徐々にうつになる①と比べて、予兆が見えず本人も周囲も気付きにくいので注意が必要です。

④ロンリー・トンガリー型

自我が強く、いつでも誰に対しても我が道を貫く、軋轢を恐れない強気姿勢で常にいたのに、その自我、自信がふとしたことで揺らいだ時に、一気にうつに突入してしまうケースです。

周りとのあつれきが大きく孤立してしまい、居心地の悪さや自分を分かってもらえないつらさから調子を崩します。

⑤耐えて笑って型

相手を立てるがゆえに、全体の調和を守るために、いつも顔で笑って心で泣いて、自分を押し殺して、その先に受容限度を超えてある日ポキリと折れてしまうケースです。

⑥ドキドキ顔色うかがい型

不安が強くいつも緊張し、ちょっとしたことで落ち込みやすい性格で、相手の心理を必要以上に過敏に感じ取って、妄想レベルの想像をして不安に押しつぶされてしまうケースです。

⑦ライトうつ型

嫌なこと、責任がかかることには過敏に反応して落ち込んで潰れやすい一方で、ストレスの少ない環境ではのびのびと元気に動ける、そんなタイプのうつです。「新型うつ」「現代型うつ」という名前で問題になったのがこのタイプですね。

一見、本当に調子が悪いのかどうか、周囲から判断するのが難しい場合もありえます。

「仕事では調子悪そうなのに遊ぶ時には元気だな。」、「休職中なのに旅行には行けるんだな。」と周囲から非難を受けやすいですね。

複数のタイプを併せ持った「うつ」も存在します。

診断や治療には産業医や精神科医の診察が必要ではありますが、タイプ分けを理解しておくことで、周囲や本人がうつを身近に感じて受け止めやすくなります。また、周囲としても統一した見解や対応方法を共有しやすくなります。

この対処をどのようにするかは次回に説明しますね。

診察では何をしてくれるの?

診察で話したいことを頑張って伝えたら、精神科医が必要な情報を追加で質問したり、表情や声のトーン、仕草などから読み取った情報から診断や今後の治療の進め方を決めます。

1回の診察では診断がつかず、何度も診察を重ねて、その間に病状も変化していく中でやっと診断がつく場合もあります。

そういうこともあるので、1回で全部を伝えきれなくても落ち込む必要はありません。何度も診察していく中で段々話していこう、と長い目で考えて良いですよ。

何度か診察を受ける中で、「あれ、何か話しがかみ合っていないな。」「毎回テキトーに流されているな。」「症状を言うと説明もなく薬が増えるだけで深い話しが出来そうもないな。」

と不安感や不信感を持つことがあるでしょう。

そのような不安感や不信感を心の中に閉まったままだと、診察を重ねても良い治療にならないことが多いです。不安感や不信感を精神科医に感情的にぶつけても話しがまとまらなくなってしまい、うまく伝わらないことが多いので、なるべく伝えることを整理してた上で、不安な気持ち、不信感を伝えてみましょう。

不安、不信は我慢せず、内容を整理した上で伝える

そうやって精神科医と患者さんがうまく意思疎通を図ることが出来るようになることも多いです。

不安感や不信感を穏やかに伝えたにもかかわらず、それで医師が不機嫌になったり、医師の姿勢が変わらないようでしたら、医師を変える、病院を変えることも考えて良いと思います。

診察でどのようなことをするかは精神科医によって変わりますが、一般的には現在の困っている症状をどう改善するか、再発しないためにはどうすれば良いかがテーマとなることが多いです。現時点で減らせるストレスはないか、調子を崩しやすい考え方、過ごし方をしていないかを一緒に考えます。

その中で、多くの精神科医は「向精神薬」といわれる薬を処方します。

メンタルの不調が脳の神経細胞の問題に由来するという仮説に基づいて薬が処方されます。

「ストレスが原因で調子を崩したのに薬っておかしくない?こんなの飲んでも解決しないでしょ?」「怖い副作用がたくさんあるってわかっているのに薬を出されたくない。」

と不安に思う方もおられるかと思います。

確かに、薬を飲んだから全てが解決するとは私も思いません。

ただ、ストレスを受け続けたり眠れなくなったりして傷ついた脳の神経細胞は、些細なストレスでも過剰に反応しやすくなり、本来感じるストレスの販売も強く感じたり、自然には回復出来なくなることが多くなります。

そのような状態の脳の神経細胞を休ませ、ストレスを過剰に感じずその大きさの通りに受け止めることが出来るために、薬は役立つと私は考えます。

私の経験でも、うつ病で眠れなくなって死にたい気持ちが強くなった状態から脱するためには、薬の力が不可欠でした。あの時に我慢して薬を飲まなかったら、今生きてここにいないかもしれない、と考えるとぞっとします。

ただ、薬には副作用が多くありますし、また何でもかんでも薬で解決しましょうというのは違うと思います。

薬だけに頼らないためには色んなアプローチの仕方があると思いますが、私が提案するのは運動をすることです。

運動することによってストレスホルモンを消費して、ストレスが過剰になりすぎないように出来ます。また、運動することによって脳の神経細胞の肥料となるBDNFという物質が出て、脳の働きを強くしてストレスに対して崩れにくく出来ます。

どこまで回復出来るのかは個人差があります。しかし、薬を飲んでいるだけで症状が全部消えて完全に良くなるのは難しいです。

心の病気を発症する原因は一つではないので、薬を服用しつつ、病気になりやすい考え方や生活習慣を変えていくことが必要になります。

考え方、生活習慣は長年かけて築き上げたものですから、簡単には変えられませんし、根本から大きく変えることは難しいです。心の病気と上手く付き合いながら、日常生活が送れたり仕事が出来たり。その人に合った回復の目標を立てていきます。もちろん、回復のレベルを上げるために運動も活用して頂きたいと思います。

暗い夜道のランニングは目立つように(笑)

心の不調は精神科?心療内科?

唐突ですが、皆さんに質問です。心の不調を抱えた時に、何科に行きますか?

精神科!という方と、心療内科!という方がいらっしゃるのではないでしょうか?

最近は「メンタルヘルス科」「メンタルクリニック」とのみ標記している病院も増えましたが、精神科と心療内科の両方を掲げているところも多くなっていて分かりにくいですよね?

この2つの科はもちろん別物です。

精神科というのは、うつ病とか、パニック障害とか、統合失調症とか、皆さんになじみのある「心の病気」を診る科です。

一方、心療内科というのは、内科ですのであくまでも体の病気を診るところです。体の病気の中でも特に、精神的ストレスなど心の不調が症状に影響を与えているものを診る科です。高血圧、胃潰瘍、じんましん、アトピー、円形脱毛症などが例です。いわゆる「心身症」というものですね。

ここで心の病気、体の病気、と分けてはいますが、心と体はつながっていると感じることが多いです。心の病気は脳の不調で、そして脳も体の一部であるということを考えると理解はしやすいですよね。

私自身を振り返ると、うつ病の症状が悪化している時には風邪をひきやすく、風邪の症状も重症化して長引きました。うつ病だから、というよりもうつ病の症状として食欲が低下したり、眠れなかったり、運動も出来ず体力が落ちていたりということが原因なのですが。

体の調子を整えると心の調子も整いやすいということは強く実感しています。その体験が、運動で治すという私の考えにもつながっています。

心療内科、精神科の両方が並べて掲げられている場合は心の病気、心の不調が関係する体の病気両方を広く診ますよ!という意味だとお考え下さい。

精神科だけしか書いていない病院が心療内科の病気を全く診ることが出来ないのかというと、そんなことはないです。心療内科だけしか書いていない病院も、心の病気にも対応できることが多いです。

ただ、中には「精神科のことはそこまで得意ではない。」という病院もわずかにあります。

心療内科だけを掲げている病院を受診する前に「こういう症状なんですが受診してもいいでしょうか?」と聞いてみると無駄足にならずに済むかもしれませんね。でも、そんな電話するのも気が引けるし無駄足になるのが心配、ということでしたら「精神科」を掲げているところにしましょう。

ちなみに・・・当院も「心療内科・精神科」と併記しています。最初は「精神科」だけにしようと思っていたのですが、「精神科、だけでは相談しにくい!」という声を多く頂いたことから、両方掲げることとしました。

受診先が決まったとして、じゃあ精神科では何をするのでしょうか?

診察ではまず、精神科医が患者さんの話しを聞きながら診断や治療方針を決めます。

ですから、困っている症状を話して頂くのですが、精神科医は患者さんが話す内容だけでなく、表情の変化。仕草など、言葉以外の情報にも注目しています。

何を話さないといけない、という決まりはないので何を話しても大丈夫ですが、心を許して良いのか分からない相手に全部は話せませんよね。話したくても、緊張して大事なことを言い忘れることもあると思います。

1回の診察で全部を話す必要はなく、また精神科医も1回の診察だけでは判断できず診察を重ねる中で診断をしたり治療方針を決めることもあるので、医師との相性も考えつつ徐々に話していくものだと、気長に構えていてくださいね。

ただ、大事なこと、漏らさず伝えたいこともあると思います。

大事なことは紙に書く、携帯電話のメモに保存しておくなどして、それを見ながら話して下さい。大事なことがたくさんありすぎて整理がつかない、という場合にはそれを全部メモして、まずは3つだけ伝えてみましょう。

1度にあれもこれも伝えなきゃ、と混乱して結局は大事なことを伝えずに終わってしまい後悔することもあります。時間をかけて少しずつ順番に伝えていく。そう考えると落ち着いて伝えやすくなります。

何を伝えるかについては、「生活や仕事に影響が出て困っていること」という基準で選んでメモをしてくださいね。

それでも話せない場合は、メモをそのまま見せてしまっても良いかもしれません。その中でどれが大事かは、精神科医が感じ取ってくれます。

メモに書くのは文字だけとは限らず、絵や図をかいてみるのも良いですね。

完璧な患者を演じる必要はないです。まずは話せる範囲内のことだけを話し、打ち解けてきたら徐々に大事なことを話していくようにしましょう。言葉で伝えるのが難しかったら、文字や絵、図の形で伝えてみる、というのも活用してみてください。

心の病気の伝え方

心の病気は一般的には「脳の神経伝達物質の不具合」「脳内のBDNFの減少」などと説明されます。

親が心の病気だと子供も必ずなるのではないか、親の育て方が悪いから心の病気になった、ストレスがあるから心の病気になるんだろう、などと言われますが、実際のところは分かっていないことも多いです。

同じ遺伝情報を持つ一卵性双生児でも片方だけが心の病気になることもありますから、遺伝だけで決まるものではなさそうです。

同じ環境で同じように育っても、心の病気になる人とならない人がいるので、環境だけで決まるものでもなさそうです。

過度のストレスは原因になりますが、ストレスのない生活を送ることはあり得ません。

分からない中で私が漠然とイメージしているのは、心の病気になりやすい素因を持っていて、それに環境的な要因が重なって、耐えられるレベルを超えると症状が出てくるというものです。誰もが心の病気になり得ると思っています。

誰もがなり得るとしても、心の不調を他人にどうやって言葉として伝えるのか難しいなと悩むことはないですか?

体の不調だと、「熱が出ている。」「お腹が痛い。」「胃が気持ち悪い。」などと言葉で説明しやすいのですが、心の不調は伝え方が難しいと思われるかもしれません。

せっかく受診をしたのに、「こんなんでうちに来られてもねえ。」と鼻で笑われたとか、「こんなの病気じゃないんだから来るな。」と説教されたとかいう話しも聞きます。

個人的には、医師がいきなりその言い方をするのはおかしいと感じます。

心の悩みがある場合、体の症状で困って内科に行ったけど「内科じゃなくて心の問題だよ」と言われた場合には、どんな症状であっても受診してみて良いと思います。

それをいきなり笑ったり怒ったりする病院は、「そんな程度の低いところ、こっちから行ってやらないぞ!」くらいの上から目線でもいいと思っています。

医師ならばまずは困っている内容を聞いて受け止めて、それが治療の必要がないものであれば、心配しないで大丈夫ですよと柔らかく伝えるべきではないでしょうか。

最初から受診の基準が分かる人なんていないですよね。それを怒ったり笑ったりするようなところはこちらから見限りましょう。

でも、そうはいっても、せっかく緊張して行ったのに、怒られたり鼻で笑われたりして平気でいられる人はまずいないです。

私が中学1年生の時に、心の不調から吐き気が強くなって走れなくなり、倒れたことがあります。その時に、病院で何をどう説明したら良いのか、途方に暮れました。黙って何も言えない私の代わりに親が説明してくれたのですが、「走ることがプレッシャーになって気持ち悪くなってしまう。」というような説明でした。それに対して医師は、「それは病気じゃないよ。スポーツやるんだったらそれくらい乗り越えないと。」と怒るのみで、私のつらい思いは伝わりませんでした。

うまく伝わらない・・・・・

そんな経験があるので、どうやったら伝わるのかというのは悩む方の気持ちは理解できているつもりです。

私が皆さんにお教えしたいのは、「生活、仕事にどのような影響が出て困っているかを医師に伝えてみましょう。」です。

例えば、「夜寝ようとしても眠れなくて、仕事に行ってもずっと頭の中がぼんやりして、一応仕事はしているけどうまくできている気がしない。」

「胸が苦しくて。じっとしていられないくらいの感覚になって動き回らずにはいられなくて。すべてのことに集中できない。」

「朝だるくて、起きないといけないのに起き上がることが出来なくて、だらしがないと親に怒られて言い合いになる。」など。

もちろんこれだけで診断はつきません。しかし、このように「生活や仕事に影響が出て困っている」ことを話して頂くと、我々精神科医は患者さんが実際に困っている様子を思い浮かべながら、さらにお話しを引き出していくことが出来ます。診断や治療の進め方を考えていくことが出来ます。

何をどう話したら良いのか分からない場合には、「生活や仕事に影響が出て困っていること」から順番に話すようにしてみてください。

この「生活や仕事に影響が出て困っている」という基準はとても大切です。これは実際にあった話しですが、ある方がこのようにおっしゃっていました。

「仕事に行くのが苦痛で朝起きられなかったらうつ病だ。って記事を見たけど。それって誰でもあるよね?俺も朝起きるの面倒だな。仕事に行きたくないな、って布団の中でしばらく葛藤するよ。じゃあ、俺もうつ病だな。」

これでは、うつ病は怠け者だと誤解されてしまいますね。うつ病の場合は、気分が落ち込む、やる気が出ない、眠れないなどの症状があって、仕事や生活に大きな支障が出てしまいます。このように、影響が出て困っているかどうかは、病院に行くべきかどうかを決める基準になります。

「ネットでうつ病の簡単なチェックがあって、試しにやってみたらうつ病で受診が必要と出たけど、別に自覚ないんだけど。」という話しも度々耳にします。

「うつ病チェックをやってみてうつ病と出たから、別に困っていないけど受診する」のではなく、「症状が出てつらくて困っていて、かつうつ病チェックをやってみたらうつ病と出たから受診する」と考えてください。

「最近眠れない日があるけど、いつもじゃないし昼間眠くもないし元気だしな。」だと受診を急ぐ必要はないけど、「眠れなくて昼間もぼうっとしてやる気が出なくて、何もできず寝ていることが増えたな。」だと受診を積極的に考える。

この違いが理解できたら、受診の基準についてはご自身の判断を信じて大丈夫ですよ。

「明るい精神科」とは

「精神科」と聞いて皆さんはどのようなイメージを持つでしょうか?

以前と比べて偏見は減りつつあるとは思うのですが、それでもまだ「重い」「暗い」「怖い」得体の知れない場所だと感じる方が多いように思います。

また、精神科医以外の医師の中には、今でも精神疾患に対してマイナスなイメージを強く持っている方がいます。精神疾患を持つ患者さんが内科などで体の症状を相談しても、精神疾患を持っていると分かった途端に内科医の態度が変わって、「うちでは診られないよ。」と冷たく言われて、体の病気の治療開始が大きく遅れたという話しを患者さんから実際に聞きます。

私だって、精神疾患への偏見がないとは言えません。

私は12歳でうつ病を発症して4回繰り返しましたが、それを公表出来たのは回復して安定した38歳頃になってからでした。

私が精神科に通って薬を飲んでいることを知ると、「危ないヤツ」「頭がおかしいヤツ」と言って周りの人たちは距離を置くのではないか、と恐れて自分の病気のことは長い間隠していました。

精神疾患を持っていることは恥ずかしいことではない、と患者さんにはエラそうに言いながら、自分が恥ずかしくて言えなかったのです。

公表をしている今でも、「あいつ、うつ病だって。弱いヤツだぞ。気持ち悪いな。」などと周囲から見られているのではないかと気になります。

でも、気にしてばかりでは何も変わりません。

精神的な不調を感じても誰にも相談出来ず抱え込み、どうにもならないくらい重くなってからやっと病院に行く、という状況はそろそろ終わりにしないといけません。重くなってからでは、治療をしても治りが悪くなってしまいます。

手遅れになる前に、精神的な不調が起こる前に予防が出来て、精神的な不調が起こりそうな時に早い段階で周りに相談が出来て、治療を受けられるのが当たり前の世の中を作りたいと考えています。

そのために私は、「明るい精神科」というものを広めていきたいと思っています。

「明るい」という言葉は、精神的にツラい方からすると「ふざけている。」「ツラい気持ちを軽く見ている。」と不快にと感じられるかもしれません。

しかし、決して病気を軽いものと考えたり、ふざけているのではありません。

私は「明るい」という言葉に、「楽しい」「陽気な」という意味よりも「道が照らされてよく見えている」という意味を込めています。

私は仕事が終わった後の夜遅くにランニングをするのですが、街灯のない暗い道を通るので足元が見えず、足を取られて転ばないか、捻挫しないかなど不安を感じながら走っています。何度同じ道を走っても、やはり夜の暗く足元が見えない中を走るのは怖さがあります。

実を言うと、暗い中を走っていて排水溝に落ちたり車止めのチェーンに足を取られて転んで顔を打ったりしたことがあります。だから尚のこと恐怖なのです。

しかし、同じ道を昼間の明るい中で走ると、足元が見えて先も見通すことが出来て、安心して走ることが出来ます。

精神疾患を抱えている方、精神疾患になるかもと不安に思っている方は、「どこに相談したら良いのかな?」「本当に相談してよいのかな?」「相談した結果もっとつらい思いをするんじゃないかな?」などと暗い中で足元も前も見えず不安や恐怖を感じています。

私の話しが、足元や前を照らす明かりとなったら良いな。そんな思いを込めて「明るい精神科」を掲げていきたいと思います。