精神科医になったわけ

中学時代から吐き気、倦怠感や不眠に苦しみましたが、病院に行っても「それくらい乗り越えないと。」と言われて、いったい自分の不調がなぜなのかを知りたいと思ったことが医師を志したきっかけでした。

高校時代に漠然と思っていたのが、「スポーツドクターになったら分かるかも。」ということでした。漠然としていたので、スポーツドクターって何?と言われても、「スポーツ選手を診る医者」としか答えられません。

大学に入ってから精神科に通院したのですが、それが自分の目指す道とはピンと来ていませんでした。大学5年生の途中までは漠然とですが、「スポーツ選手を一番診るのは整形外科だから、整形外科医が良いな。」と考えていました。

しかし、当たり前ですが整形外科医がスポーツ選手だけを見ているのではありません。整形外科で診る疾患はもっと幅広く、スポーツ整形といわれる分野はその中のごく一部です。

6年生になって実習カリキュラムの中で整形外科を1ヶ月間回ったのですが、自分の不調の原因とはどうしても結びつきそうもない、そして自分が整形外科医としてやっていく姿がどうしてもイメージ出来ませんでした。

もっと積極的に進路を考えて活動すべきなのですが、ある体験を機に私は「私なんかがどこに行っても迷惑なんだろう。」と消極的になっていました。

大学5年生になって最初に回った科でのことです。1週間という短い期間でしたが、その科の勉強をしっかりして、協力して頂ける患者さんとも時間をかけて接し、朝から遅い時間まで自分で言うのも変ですが熱心に取り組みました。

受け持った患者さんについてのレポートを私なりに一生懸命作成し、その科の医師全員が集まる場で発表を行いました。しかし、そこで教授に言われたことは、「これ、研修医のサマリーをうつしただけだろう?そんなの実習とは言わない!」という厳しい内容でした。

研修医のサマリーをうつしたのではなく、自分で一から作成したレポートだったのですが黙ってしまいました。そして、「自分は何をやってもダメなんだ。ダメだから、自分で作成したとも思ってもらえないのだ。」と考えて何も言えず、黙ってしまいました。

患者さんの命に関わる仕事ですから、安易な気持ちで実習するなという気持ちで厳しく学生に接するのは今では理解もできます。また、それくらいで黙らずに、自分で頑張って作成したのだったらちゃんとそう言い返せば良かったのかもしれません。

しかし、その時の私は大人数の前で否定されたことの恥ずかしさ、情けなさばかりが頭の中を占めていました。

そして、それ以降の実習では消極的になり、「どうせ自分なんかがこの科に行っても邪魔だろうな。」という考えばかりで、自分の進路を決められずにいました。

その程度のことで・・・?と思われるでしょうが、自己評価が低く周囲の目を過剰に気にする私には、とてつもなく大きな出来事のように感じてしまいました。

そんな煮え切らない状態の私でしたが、精神科を回った時に大きな衝撃を受けました。

どの科でも患者さんの「現病歴」といって病気になるまでの経緯や受診までの経過を聞き取るのですが、精神科の現病歴は聞き取る量が違いました。兄弟の人数、親の職業、生い立ち、性格など細かに聞いた内容が記載されていました。患者さんの全てを理解した上で治療開始をしている。そういう印象を受けました。

また、同じ診断名がついていても治療方法が全然違うことも衝撃でした。治療薬が異なるだけでなく、ある患者さんには「ゆっくり休んで下さい。」と休養を勧めて、ある患者さんには「起きて作業療法をやってみましょう。寝てばかりでは回復が遅れます。」と外との交流を勧める。他の科の医師の中には、精神科医のことを馬鹿にする医師もいました。「あいつら(=精神科医)を見ていると、どっちが患者か分からないよ。」「あんなの医者じゃないよ。誰でも出来ることしかやっていない。」という言葉を耳にしたこともあります。

しかし、これだけ患者さんの話しを丁寧に聞いて患者さんの全体を理解し、治療方針を決めていくのは誰でも出来ることではない、と私には思えました。

同じような治療を私も出来るようになりたいという思いが強くなり、精神科医を志しました。

前回話した通り、睡眠は不安定ながら吐き気や食欲低下は落ち着いて、走れるようになっていたので、私の中学時代の不調の原因が何かを調べたいという気持ちはなくなっていました。

6年生の夏になって進路が決まってからは、出遅れましたが徐々に勉強に身が入るようにもなり、試験での成績も徐々に上がりました。

そして無事に大学を卒業し、医師国家試験にも合格し、2003年4月から精神科医としての生活が始まりました。

しかし、その直前に私と両親との間で大きな衝突が起きました。

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